ゆっくり急げ。

伝えたいこと、気になったことをだらだら書いてみます。

劇団員がお金がないワケ。

前回のブログで劇団を辞めた理由はお金がないからだと書いた。
詳しくはこちら↓
…と言えるほど詳しく書いてませんがよかったらどうぞ。
僕が劇団を辞めた理由。 - ゆっくり急げ。


ではなぜ劇団員はお金がないのか。
簡単である。
収入が少なく、支出が大きいからだ。
劇団員は無償の作業に時間を使い、稽古をするのに交通費がかさみ、さらには出演するのにもお金を払ったりするのである。

今日はそんな劇団員の収入のお話をしたい。
そもそも劇団の収入源は大きく分けて2つある。
物販(物品販売の略、グッズ販売のこと)とチケット代の売り上げだ。
これらはそのまま劇団員の収入とも言える。



・物販収入
物販の売り上げから個人に入る収入は微々たるもので、自分が写っている写真(ブロマイド)の売り上げの数%(ロイヤリティー)がもらえたりする。
1枚で売っていることは珍しく、大抵2枚500円か4枚1000円で1セット。
その30-50%ほどがもらえるので、1セット売れて150円ほど。
そんなに大きな収入源にはならない。
(値段もパーセンテージも劇団によってピンキリ。僕のところは劇団員にはどれだけブロマイドが売れようがロイヤリティーは入ってこなかった)


・ギャラ
次にチケット代を基に劇団員に還元されるのが出演料、すなわちギャラである。
このギャラには2パターンあり、出演交渉の時に「○○円で出演をお願いします!」と言われるパターンと、チケットバックと呼ばれる自分が売ったチケットの枚数によって金額が変わるパターンがある。
これらは簡単に言えば集客できる役者かどうかで決まる。
集客できる役者には高いギャラを払って出演してもらう。集客できない役者にはギャラは少なく、場合によっては逆に払ってもらうこともある。

-1ステ制
出演の依頼を受けたときに提示してくれる場合は大抵"1ステージ○○円、合計××円"という算出になる。
自分が所属していたところで主役をやるとなれば1ステ7万円ほど。基本1公演7ステージなので49万円がギャラとなる。
もちろんそれなりの実力、集客力、話題性などがあってギャラが決まる。役によっては1ステ数千円とかの場合ももちろんある。

-チケットバック制
厄介なのはチケットバックである。劇団員の場合ほとんどはこの支払方法。チケットバックは大抵、「この枚数以上は売ってください!」というノルマとセットとなっている。たとえば”ノルマ30枚、31枚目からバックあり”という感じである。31枚目以降のバックの金額もまちまち。チケット分全額バックしてくれるところもあれば、31枚目以降1枚につき500円バックなどという鬼畜なところもある(うちの劇団がプロデュースしている小劇場で行う公演はこの条件であった)。

ノルマと呼ばれるだけあって30枚に達しない場合はその差額分のチケット代を自分で払うのである。
一見簡単そうに思えるこの30という数字がなかなか厳しい。
正直自分は1度もこの30という数字を超える集客をできたことはなかった。
これが"劇団員は自分でお金を払って舞台に立っている"という現状である。


ちなみに自分が最も好条件で出演依頼を受けたのは
"1ステ9000円×18ステージ(ノルマ無し)"であった。
有名な2.5次元俳優の方々と共演させていただき、チケットは即完売。
チケットを売りたくても売れない状況のためノルマなし、ギャラもどうぞ!という太っ腹な団体さんだった。



・アルバイト
上記のような場合を除き、基本的には微々たる収入、もしくはお金を払ってまで出演している劇団員。
大きな収入源はもちろんアルバイトである。時間を見つけてシフトを組んだり、体が空く夜勤に働く。
しかし劇団員たるもの好きにアルバイトできたもんじゃない。


劇団員である以上、自分たちの劇団の公演の準備は自分たちで行う。
僕が所属していた劇団では衣装は基本手作り、舞台上で使う小道具も作るか捜して集めるのが基本。
舞台のセットだって自分たちでサブロク(横3尺、縦6尺の大きさのパネル)に色を塗って、なぐり(トンカチ)で組み立てる。
稽古場に足を運び、欠席者の代役、演出家や共演者のフォロー。やることはたくさある。
しかしこれらの仕事に対してはお金が出ない
ギャラは出演者のみに支払われるからである。

僕がいた劇団は出演者が20人ほどいる中で、劇団員の出演者の数は5人程度。
あとは全部外部のゲストであった。
出られない劇団員は20人を超える。
彼らはいつか自分も劇団の代表として舞台に立てる日を夢見て、無償で劇団の仕事を手伝ってくれているのである。


ちなみに僕は2年半で2回、自分の劇団の舞台に立たせてもらえた。

キャパはどちらも300人ほどの劇場
・1ステ5000円×14ステージ(出演する劇団員7人で100枚ノルマ)
・1ステ5000円×7ステージ(ノルマ20枚)

おかげさまでどちらも黒字。
だが1カ月みっちり時間を費やし収入は数万円。これではもちろん生活できない。。。



劇団員はアルバイトする時間を削り劇団に尽くし、スケジュールに空きがあればお金を払って他の舞台に立つのである。